美容施術解説
軽度のワキガはどこから?自分で確かめる方法と、やりすぎない治療の選び方
2026/09/29
「上着を脱いだ瞬間、自分でも一瞬だけにおいを感じることがある」「家族に一度だけ指摘されて以来、電車で吊り革につかまるのが怖い」……。このようなお悩みをお持ちではありませんか?
こうしたご相談の背景にあるのは、においそのものよりも「自分がどの程度なのかが分からない」という不確かさです。ワキガ(腋臭症/えきしゅうしょう)は、においの強さを測る物差しが日常の中に存在しないため、軽度なのか、それとも治療が必要な状態なのかを判断しにくい症状といえます。
本記事では、先に結論をお伝えします。「軽度のワキガ」に、公的に統一された診断基準は存在しません。段階分けはあくまで診療上の目安であり、大切なのは自分のにおいが日常のどの場面で問題になるのかを知ることです。
形成外科専門医の視点から、確かめ方・治療の選択肢・そして治療を急がないという判断まで、エビデンスに基づいて詳しく解説します。
第1章 「軽度のワキガ」はどこからか|段階分けの実像
この章では、多くの方が最初に知りたい「軽度の線引き」からお答えします。結論を先に申し上げると、線引きそのものが医学的に固定されていません。
1-1. ワキガのにおいが生まれる仕組み
わきの下には、エクリン汗腺(かんせん)とアポクリン汗腺という2種類の汗腺があります。エクリン汗腺から出る汗は、その大部分が水分で、それ自体は強いにおいを持ちません。
一方、アポクリン汗腺から分泌される汗には脂質やたんぱく質が含まれており、これが皮膚の常在菌によって分解されることで、独特のにおいが生じます。
アポクリン汗腺はわきの下のほか、外耳道(がいじどう=耳の穴)や乳輪、外陰部などに分布しています。
つまり、においの正体は汗そのものではなく、分解された後の物質です。
ワキガの程度は、アポクリン汗腺の数や分泌量、菌の状態、そして汗の量といった複数の要素が重なって決まります。
ここを押さえておくと、後述する治療法が「汗を減らすもの」と「においの元となる汗腺に働きかけるもの」に分かれる理由が理解しやすくなります。
1-2. 軽度・中等度・重度という段階分けに公的な基準はない
インターネット上では「レベル1からレベル5」「軽度・中等度・重度」といった分類をよく見かけます。ただし調べてみると、5段階で示すもの、3段階で示すものが混在しており、その対応関係も一致していません。
私が確認した限り、厚生労働省などの公的機関が腋臭症の重症度を段階で定めた基準は見当たりませんでした。
医療機関が用いている段階分けは、診察の場で程度を共有するための臨床的な目安と考えるのが正確です。
日本医科大学武蔵小杉病院は、においの評価について「臭いの程度の確認は医師の主観的判断であり、自臭症(自己臭症)などの『気にしすぎ』である場合もあります」と説明しています。
専門の医療機関でさえ、においの判定には主観が入ることを明示しているのです。
なお、環境行政の分野には悪臭防止法に基づく6段階の臭気強度表示法がありますが、これは工場などの悪臭を対象とした尺度であり、体のにおいの診断基準ではありません。数字で示されているからといって、そのまま自分に当てはめられるわけではないのです。
1-3. 「軽度」を距離と場面に置き換えて考える

段階の数字にこだわるよりも、においが問題になる距離と場面で捉えたほうが、ご自身の状態を把握しやすくなります。
一般的に軽度と表現される状態は、次のような範囲を指していることが多いといえます。
- 距離: 通常の会話をする距離では気づかれにくく、密着した距離やわきに顔を近づけたときに感じられる程度。
- 場面: 一日中ではなく、汗をかいた後・緊張した後・上着を脱いだ直後など、条件が重なったときに限って気になる。
- 衣類: 脱いだ直後のシャツからは感じられるが、周囲から指摘された経験はほとんどない。
カウンセリングでも、「常に困っているわけではないが、特定の場面だけ不安になる」とお話しされる方が多くいらっしゃいます。この段階であれば、治療の選択肢は手術だけではありません。
第2章 軽度のワキガを見分けるセルフチェック
ここでは、ご自宅で確かめられる方法を整理します。いずれも診断そのものではありませんが、状態を把握する手がかりになります。
2-1. 体質のサインを確かめる
ワキガの体質を推測する手がかりとして、次の項目が知られています。当てはまる数が多いほど、アポクリン汗腺の働きが活発である可能性が高まると考えられています。
- 耳垢が湿っている: アポクリン汗腺は耳の中にも存在するため、耳垢の性状が手がかりになります。
- 両親のいずれかにワキガがある: 体質には遺伝的な背景があるとされています。
- 衣類のわき部分が黄ばみやすい: アポクリン汗腺からの分泌物には色素が含まれることがあります。
- 脇毛が濃い・多い: 毛包に伴ってアポクリン汗腺が分布するためと考えられています。
- 脇毛に白い粉状のものが付く: 分泌物が乾いて付着したものと説明されます。
なかでも参考になるのが耳垢です。日本医科大学武蔵小杉病院は「アポクリン腺が耳の中にも存在しており、湿性耳垢の人は8割程度が腋臭症を罹患していると指摘されています」と述べています。
耳垢の性状は、ABCC11という遺伝子の一塩基の違いで決まることが分かっています。
これは2006年に日本の研究グループが報告したものです(Yoshiura K, et al. A SNP in the ABCC11 gene is the determinant of human earwax type. Nature Genetics, 2006.)。科学技術振興機構の発表によれば、日本では70〜80%が乾型とされており、湿型は少数派にあたります。
つまり、耳垢の性状は遺伝的な体質を映す指標として参考になります。ご両親のいずれかが同じ体質であれば、遺伝の影響を考えてよいでしょう。
ただし、これらはあくまで体質の傾向を示すものです。当てはまってもにおいが弱い方はいらっしゃいますし、その逆もあります。脇毛の量や黄ばみについても同じで、単独では判断材料になりません。
2-2. ガーゼでにおいの程度を確かめる

医療機関でも用いられるのが、ガーゼを使った確認方法です。日本医科大学武蔵小杉病院は「診察の間、わきにガーゼを挟んでいただき、臭いの程度を確認します」と説明しています。
ご自宅で試す場合は、入浴後に清潔なガーゼやティッシュをわきに5分ほどはさみ、外してからにおいを確かめます。判定の目安は次のとおりです。
|
確かめ方 |
感じ方の目安 |
想定される状態 |
|
鼻を近づける |
ほとんど感じない |
におい対策の必要性は低い |
|
鼻を近づける |
わずかに感じる |
軽度に相当することが多い |
|
手に持った位置 |
離してもにおう |
中等度以上の可能性 |
|
置いた状態 |
周囲に広がる |
重度に相当する可能性 |
この方法の限界も知っておいてください。判定するのはご自身の鼻であり、後述するとおり自分のにおいは正確に評価しづらいという問題が残ります。
2-3. 自分の鼻では判断しきれない理由
人の嗅覚には、同じにおいを嗅ぎ続けると感じにくくなる性質があります。自分のにおいは常にそばにあるため、慣れが生じて弱く感じられるのです。
反対に、においを気にするあまり、実際には感じられない程度のにおいを強く意識してしまう方もいらっしゃいます。カウンセリングでも、ご本人の訴えの強さと診察での所見が一致しないケースは珍しくありません。
そのため、可能であれば同居のご家族など、率直に答えてもらえる方に確認を依頼することをお勧めしています。
その際は「私、においますか」と漠然と尋ねるのではなく、脱いだ直後の衣類のわき部分を対象にして、感じるかどうかを聞くほうが答えが返ってきやすいでしょう。
セルフチェックだけで判断がつかない場合には、医療機関での診察という選択肢が残されています。当院でも、治療を前提とせず状態だけを確かめたいというご相談をお受けしています。
第3章 軽度のワキガと間違えやすい3つの状態
「軽度かもしれない」と感じている方の中には、そもそもワキガではない状態が含まれていることがあります。ここを切り分けておくと、選ぶべき対策が変わります。
3-1. わき汗(腋窩多汗症)はワキガとは別の問題
汗の量が多いことと、においが強いことは、医学的には別の問題として扱われます。汗の量が過剰な状態は原発性腋窩多汗症(げんぱつせいえきかたかんしょう)と呼ばれ、腋臭症とは診療の枠組みが異なります。
日本皮膚科学会の原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版には、重症度の指標が示されています。用いられているのはHDSS(Hyperhidrosis Disease Severity Scale=多汗症疾患重症度スケール)です。
同ガイドラインは4段階のうち第2段階を「発汗は我慢できるが,日常生活に時々支障がある」と記載しています。そして3と4を重症の指標としています(原発性局所多汗症診療ガイドライン策定委員会. 日皮会誌, 133(2), 157-188, 2023.)。
この指標が測っているのは、においではなく発汗による生活への支障です。汗じみが主な悩みであれば、においを対象とした治療ではなく、汗を抑える治療のほうが適していることになります。
もっとも、両者が重なることも少なくありません。汗が多いほど常在菌が繁殖しやすい環境になるため、汗を抑えることでにおいが軽くなる場合もあります。
3-2. 汗のにおい・衣類のにおいとの区別
わきのにおいには、アポクリン汗腺と関係のない原因も存在します。エクリン汗腺からの汗が皮膚表面の常在菌によって分解されて生じるにおいや、衣類に残った汗が乾く過程で生じるにおいもその一つです。
判断の手がかりになるのは、入浴直後の状態です。清潔にした直後からにおいが立ち上がる場合はアポクリン汗腺の関与が考えられます。一方、時間が経ってから、あるいは特定の衣類を着たときだけにおう場合は、衣類や汗の管理を見直すことで改善する余地があります。
食事や飲酒、喫煙、疲労といった要因も体臭に影響するとされています。これらは治療の対象というより、生活の中で調整できる部分です。
3-3. においがないのに気になってしまう場合
ご自身では強くにおうと感じているのに、周囲からは指摘されず、診察でもにおいが確認できないことがあります。こうした状態は自臭症(じしゅうしょう)と呼ばれ、前述のとおり大学病院でも診断上の課題として挙げられています。
このとき、においを取り除く治療を重ねても悩みが解消しないことがあります。むしろ、手術を受けたにもかかわらず不安が残り、次の治療を探し続けてしまうという経過をたどる場合もあるのです。
私は、診察でにおいが確認できない方に対して施術を勧めることはしません。「治療の対象ではない」とお伝えすることも、医師の役割の一つだと考えています。必要に応じて、心理面からの相談先をご案内することもあります。
第4章 軽度のワキガに対する対策と治療の選択肢
ここからは具体的な手段を整理します。軽度の段階では、負担の小さいものから順に検討していく考え方が現実的です。
4-1. 市販の制汗剤で足りる範囲と、その限界
多くの方が最初に手に取るのが市販の制汗剤です。汗を抑える成分や、においの元となる常在菌に働きかける成分が配合されており、軽度の範囲であればこれで日常が問題なく過ごせる方も多くいらっしゃいます。
限界を感じるのは、汗の量が多い場合です。汗で製品が流れてしまい、効果が続かないというご相談を受けることがあります。
医療機関では、より濃度の高い外用薬を扱っています。当院ではパースピレックス(ワキ用)を¥5,830でご用意しています。市販品で物足りない方が、次の一手として試しやすい選択肢です。
なお、塗り方の細かな工夫よりも、まずは肌に合うかどうかを確かめることが大切です。刺激を感じる場合は使用を中止し、医師にご相談ください。
4-2. 汗の量が主体の場合に検討する注射治療
汗の量が多く、それに伴ってにおいが気になるという場合には、状況によりボツリヌス療法が選択肢になります。わきに注射を行い、汗を出す神経の働きを抑える治療です。
当院ではボトックスビスタ(アラガン社・アメリカ)、ゼオミン(メルツ・ファーマ・ドイツ)、ナボタ(デウン製薬・韓国)を扱っています。効果は注射後2〜3日後から現れ、その後は4〜9ヶ月(平均6か月)持続します。
ダウンタイムはほとんどなく、施術後2日間はサウナなどを控えていただきます。繰り返しの施術が前提となる治療であるため、その点は事前にご理解いただく必要があります。
4-3. においの元に働きかけるミラドライ
切らずににおいと汗の両方に働きかける方法が、ミラドライです。マイクロ波を皮膚に照射すると、細胞内の水分子が振動して熱が発生します。
皮下組織がマイクロ波を反射することで汗腺のある部位にヒートゾーンが形成され、エクリン汗腺とアポクリン汗腺が焼灼・凝固されます。
表皮と真皮浅層はハイドロセラミック・クーリングによって保護される仕組みです。両わきで、準備から照射終了まで60〜75分程度かかります。
照射の当日からシャワーが可能で、多くの方が翌日から日常生活に復帰できます。入浴や激しい運動は1週間程度お控えいただくようお願いしています。
多くの方は1回の施術で満足されますが、さらに効果を望まれる場合には、3ヶ月以降に医師の診察のもとで2回目を検討することがあります。
当院のミラドライについては[ミラドライ治療のページ]で、照射の流れや注意事項をご確認いただけます。
4-4. 切開手術(剪除法)という根本的な選択肢
においの元となるアポクリン汗腺を、医師が目で確認しながら直接取り除く方法が切開手術(剪除法/せんじょほう)です。当院でも、わきが・わきの多汗症を最も根本的に治療することのできる治療法として位置づけています。
片わき約30分程度で完了する日帰り手術です。局所麻酔にはウォーターダイセクション法を用いており、施術中の痛みはほとんどありませんが、麻酔の注射時には痛みを伴います。
術後は腋窩(えきか)に綿が固定された状態となり、その部分を1週間水に濡らすことができません。軽度の方にとっては、この生活上の制約が負担になることもあります。
4-5. 治療法の比較と料金

各治療の位置づけを整理すると、次のようになります。
|
項目 |
ボツリヌス療法 |
ミラドライ |
切開手術(剪除法) |
|
主な対象 |
汗の量 |
におい・汗 |
におい・汗 |
|
切開 |
なし |
なし |
あり |
|
持続 |
4〜9ヶ月(平均6か月) |
繰り返しを前提としない |
汗腺を除去する |
|
日常生活 |
ほとんど影響なし |
多くの方が翌日から復帰 |
1週間わきを濡らせない |
|
繰り返し |
前提となる |
3ヶ月以降に2回目を検討する場合あり |
原則1回 |
当院の料金は以下のとおりです(すべて税込)。
ミラドライ
|
プラン |
1回目 |
2回目以降(1年以内) |
|
ドクタープラン(女性医師・ウォーターダイセクション法) |
¥349,800 |
¥235,125 |
|
Nプラン(看護師・ウォーターダイセクション法) |
¥198,000 |
¥161,700 |
|
クロスプラン変更(1回目Nプラン→2回目医師プラン) |
ー |
¥313,500 |
多汗症注射(ボツリヌス毒素注射)
|
製剤 |
軽度多汗症60U |
中等度多汗症80U |
重度多汗症100U |
|
ボトックスビスタ(アラガン社・アメリカ) |
¥99,000 |
¥110,000 |
¥121,000 |
|
ゼオミン(メルツ・ファーマ・ドイツ) |
¥99,000 |
¥110,000 |
¥121,000 |
|
ナボタ(デウン製薬・韓国) |
¥71,500 |
¥82,500 |
¥99,000 |
|
ミラドライアフターフォロー(ボトックスビスタ/ゼオミン) |
¥79,200 |
¥88,000 |
¥96,800 |
|
ミラドライアフターフォロー(ナボタ) |
¥35,750 |
¥41,250 |
¥49,500 |
手術・外用
剪除法(手術): 片側 ¥165,000
パースピレックス(ワキ用): ¥5,830
麻酔料金は上記に含まれています。施術後の内服薬・外用薬は別途料金となり、土屋医師の指名料は施術費用に加えて10%をいただいています。詳細は[わきが・わきの多汗症治療の料金一覧]でご確認ください。
なお、当院では2025年8月以降にミラドライを受けられた方を対象としたアフターフォロープランをご用意しています。治療後5年間、年1回合計5回まで、韓国製ボツリヌス毒素注射を半額でご提供する内容です(他製剤は20%オフ)。
第5章 軽度のワキガだからこそ考えたい「治療を急がない」という判断
選択肢を並べたうえで、あえて逆の視点をお伝えします。軽度の段階では、治療を受けないという結論も十分にあり得ます。
5-1. 軽度に手術を第一選択として勧めない理由
私は、軽度と考えられる方に対して切開手術を最初にお勧めすることはあまりありません。理由は費用ではなく、得られる変化と負担の釣り合いにあります。
手術はアポクリン汗腺を直接取り除く方法であり、期待できる変化は大きいといえます。その一方で、わきを1週間濡らせない期間があり、傷あとが残ります。
日常のごく限られた場面だけが気になるという状態に対して、この負担が見合うかどうかは慎重に考える必要があるでしょう。
「やりすぎない」という考え方は、変化を小さく抑えることではなく、悩みの大きさに手段の大きさを合わせることだと私は捉えています。強い方法から順に試す必要はありません。
実際、制汗剤の見直しやボツリヌス療法で日常が問題なく過ごせるようになり、それ以上の治療を選ばれなかった方もいらっしゃいます。それは治療の失敗ではなく、適切な着地点です。
5-2. 保険が使えるかどうかで判断しないという視点
費用面が気になる方も多いでしょう。切開手術については、医師が腋臭症の診断を確定した場合に保険が適用されると説明されています。ただし軽度と判断された場合は対象にならないこともあり、保険の可否は治療の必要性とは別の軸です。
当院は自由診療を専門としており、保険診療は行っておりません。
大切なのは、費用の条件に合わせて手段を選ぶのではなく、ご自身の状態に合う手段を先に決めることです。
5-3. 順序を決めて試すという進め方

軽度の段階で迷われている方には、次の順序で確かめていくことをお勧めしています。
- 状態の確認: ガーゼでのセルフチェックと体質のサインを整理し、可能であれば家族にも確かめてもらう。
- 汗かにおいかの切り分け: 汗じみが主な悩みか、においが主な悩みかを分けて考える。
- 外用から試す: 市販の制汗剤、物足りなければ医療機関の外用薬を一定期間試す。
- 効果を確かめて次を検討する: 変化が乏しければ、注射や照射といった手段を医師と検討する。
この順序をたどっても、途中で「ここで十分」と感じた時点で止めて構いません。当院の[わきが・わき汗治療のページ]では、各治療の内容をご覧いただけます。
臨床現場では、順序を踏まずに最も強い手段から入ってしまい、後になって「そこまでは必要なかったかもしれない」と振り返られる方にお会いすることがあります。段階を踏むこと自体が、後悔を減らす手立てになります。
第6章 軽度のワキガ治療で知っておきたいリスクと限界
どの治療にも一定のリスクが伴います。軽度の方こそ、得られる変化とあわせてこの部分を知っておいていただきたいと考えています。
6-1. ミラドライで起こりうること
ミラドライでは、腫れや痛み、照射時の吸引による赤み、照射部分の脱毛が生じることがあります。頻度は高くありませんが、感染や炎症後色素沈着(PIH:post-inflammatory hyperpigmentation)、水ぶくれが起こる場合もあります。
日常生活への影響は大きくないとされていますが、これは「何も起こらない」という意味ではありません。施術後には抗生剤と鎮痛剤を処方し、経過を確認しています。
また、照射対象部分の皮膚が傷ついていたり肌荒れを起こしていたりする場合には照射ができません。脇毛は前日までに剃毛していただくようお願いしています。
6-2. 切開手術のリスクと傷あと
切開手術では、感染、皮膚壊死、出血、創部離開、ケロイド形成、色素沈着、テープかぶれ、傷が目立つといったリスクが挙げられます。
傷あとの残り方には個人差があり、体質によってはケロイドとして盛り上がることもあります。わきという部位は皮膚が動くため、術後の固定と安静が経過を左右します。この点を軽く見積もらないことが大切です。
6-3. 効果の受け止め方と、他院での治療に悩んでいる場合
どの治療についても、においが完全になくなると保証することはできません。アポクリン汗腺の分布には個人差があり、除去や凝固の程度にも幅があるためです。医学的には、においが軽くなることを目標とするのが妥当な表現といえます。
他院で受けた治療の結果に納得できず、ご相談にいらっしゃる方もおられます。院長の土屋は形成再建外科での経験を持ち、当院では他院で受けた施術の修正や合併症のご相談にも対応しています。
傷あとの状態や残存する症状によって取り得る手段は変わるため、まずは現在の状態を確認するところから始めます。
無理に次の治療をお勧めすることはありません。経過を見守るという結論になることもあります。
第7章 軽度のワキガについてよくある質問
診察でよくいただくご質問にお答えします。
「セルフチェックで軽度でしたが、治療を受けられますか?」
受けていただけます。ボツリヌス療法や外用薬など、負担の小さい選択肢から検討できます。ただし診察でにおいや発汗が確認できない場合には、治療をお勧めしないこともあります。
「今は軽度ですが、これから悪化しますか?」
必ず悪化するとは言えません。アポクリン汗腺の働きはホルモンの影響を受けるとされ、思春期に強まり、加齢とともに変化する傾向が指摘されています。ただし個人差が大きく、将来の程度を予測することは困難です。
「軽度だと保険は使えますか?」
切開手術は腋臭症と診断された場合に保険適用となりますが、程度によっては対象とならないこともあります。当院は自由診療専門のため、保険診療は行っておりません。
「子どもが気にしているのですが、何歳から治療できますか?」
当院では15歳以上から治療を承っております。未成年の方は保護者の同意が必要です。学校生活への影響が大きい場合もありますので、まずはご一緒にご相談ください。
「ミラドライを受ければ、においはなくなりますか?」
多くの方が1回の施術で満足されていますが、においが完全になくなると申し上げることはできません。さらに効果を望まれる場合は、3ヶ月以降に医師の診察のもとで2回目を検討することがあります。
「制汗剤を使い続けても大丈夫でしょうか?」
肌に合っていれば続けていただいて構いません。かゆみや赤みが出る場合は使用を中止し、ご相談ください。刺激の少ない製品に切り替えることで続けられる方もいらっしゃいます。
第8章 軽度のワキガは「確かめる順番」を決めることから始まります
ここまで見てきたとおり、軽度という言葉には医学的に固定された線引きがありません。だからこそ、段階を当てはめようとするより、順番を決めて一つずつ確かめていくほうが確実です。
8-1. 治療を検討する前に整理しておきたい3つのこと
来院前に、次の3点を整理しておいていただくと、診察の時間を有効に使えます。
- 困っている場面: 一日中なのか、特定の状況だけなのかを書き出しておく。
- 悩みの主体: においなのか、汗じみなのか、あるいは両方なのかを分けておく。
- 試した対策と結果: どの製品をどのくらいの期間使い、どう変化したかを覚えておく。
この3点が揃っていると、医師は汗に対する治療とにおいに対する治療のどちらから考えるべきかを判断しやすくなります。
8-2. 診察で確かめていただきたいこと

医療機関を選ぶ際には、次の点を質問してみてください。治療を勧める前に状態を確認してくれるかどうかは、判断の材料になります。
- 診察の内容: においや発汗の程度をその場で確認してもらえるか。
- 選択肢の幅: 外用・注射・照射・手術のうち、どこまで扱っているか。
- 受けない選択: 「今は治療しなくてよい」という説明もしてもらえるか。
- その後の対応: 効果が十分でなかったときに、どのような手段が残るか。
8-3. 京都・すなおクリニックが軽度のご相談で大切にしていること
院長の土屋は、2003年に東京大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部附属病院や国立がん研究センター等で形成再建外科の研鑽を積み、現在は医師・医学博士・美容外科学会専門医として診療にあたっています。
当院には女性医師が複数在籍しており、わきが・わき汗のご相談についても、カウンセリングからアフターケアまで女性のスタッフが対応します。
私たちが大切にしているのは、悩みの大きさに手段の大きさを合わせることです。軽度のワキガでお困りの方に、必要以上の治療をお勧めすることはありません。ときには「今は様子を見ましょう」とお伝えすることもあります。
他院で受けた治療の結果にご不安がある方も、修正・合併症のご相談に誠意を持ってお応えいたします。
一人で鏡の前で悩み続けるより、一度どなたかに確かめてもらうほうが、答えは早く見つかります。それがご家族であっても、医師であっても構いません。この記事が、あなたが次の一歩を選ぶための手がかりになれば幸いです。
執筆・監修:土屋すなお(京都・すなおクリニック院長/医師・医学博士/美容外科学会専門医)
東京大学医学部医学科を2003年に卒業。東京大学医学部附属病院・国立がん研究センター等で形成再建外科の経験を積み、現在は京都・四条烏丸の京都・すなおクリニックにて、外科と非外科を組み合わせた美容医療を行っています。
他院で受けた施術の修正・合併症対応にも取り組んでいます。
この医師が監修しました
土屋すなお Sunao Tsuchiya
すなおクリニック院長・日本形成外科学会認定専門医
フェイスリフトと注入・顔の手術のスペシャリスト。美容医療における「やりすぎない」自然な美しさと調和を重視し、 患者一人ひとりの生活スタイルに合わせた無理のない治療法を提案しています。
最近の投稿
土屋 沙緒
Sunao Tsuchiya
医師としての視点で見る美容の裏側や、院長個人の考え、日常の出来事についてはnoteで発信しています。











