美容施術解説
ワキガ手術のダウンタイムは何日?休める日から逆算する術後経過と選び方
2026/10/02
「手術を受けると決めたものの、仕事を何日休めばよいのかが分からない」「固定をしている間、腕はどこまで動かせるのだろうか」「傷跡が残ってしまわないだろうか」……。ワキガの手術を検討されている方から、このようなご相談を受けることがあります。
ワキガ手術のダウンタイムが分かりにくいのには、理由があります。ひとつは、切る治療と切らない治療とで術後の性質がまったく違うこと。
もうひとつは、同じ切開手術であっても、固定の方法や両わきを同時に手術するかどうかによって、生活への影響が大きく変わることです。「ワキガ手術のダウンタイムは◯日」という一律の答えは、実は存在しません。
目安としては、切開手術(剪除法=せんじょほう)でおよそ1週間の固定期間をみておき、腕を普通に使える状態に戻るまでにさらに数週間を見込むのが現実的です。
本記事では、術式ごとのダウンタイムの違い、固定と抜糸を含めた術後の経過、仕事や入浴・運動を再開する目安を、形成外科専門医の視点から詳しく解説します。「何日休めばよいか」から手術日を逆算するための材料として、お役立てください。
第1章 ワキガ手術のダウンタイムはどれくらいか|術式別の目安と休むべき日数
ワキガの治療には、皮膚を切開して汗腺を取り除く方法と、皮膚を切らずに汗腺の働きを抑える方法があります。ワキガ手術という言葉で語られるのは前者ですが、実際の選択肢はもう少し広く取れます。
ダウンタイムの長さはこの違いでほぼ決まりますので、まず全体像から整理していきましょう。
1-1. 切る治療と切らない治療でダウンタイムはどう違うか
当院でご提供しているわきが・わき汗の治療を、ダウンタイムの観点から並べると次のようになります。
|
治療法 |
皮膚の切開 |
ダウンタイムの目安 |
日常生活への復帰 |
|
切開手術(剪除法) |
あり |
固定に約1週間。腕を強く使う動作まで戻すには、さらに数週間 |
固定中は腕の動きに制限がかかる |
|
ミラドライ |
なし(マイクロ波の照射) |
腫れ・むくみやしこりが数日〜2週間程度 |
照射の当日からシャワーが可能。多くの方が翌日から復帰 |
|
ボツリヌス療法 |
なし(注射) |
ほとんどなし |
当日から。2日ほどはサウナ等を控える |
|
パースピレックス(外用) |
なし |
なし |
制限なし |
こうして並べると、ダウンタイムという言葉が指している中身が、治療によって別物であることが見えてきます。剪除法のダウンタイムは「創部が治るまで腕の使い方に制限がかかる期間」であり、ミラドライのそれは「腫れやしこりが引くまでの期間」です。前者は生活の段取りに直結しますが、後者は日常を送りながら過ぎていきます。
なお、照射や注射の治療同士でダウンタイムの長短を競わせても、あまり意味はありません。実際に生活へ響く差が出るのは、切る治療との間だと考えていただくのが実態に近いと言えるでしょう。
1-2. 剪除法で休みを確保したいのは、まず最初の1週間
切開手術を受ける場合、日程の組み立てで最初に押さえるべきなのが固定期間です。当院では、術後に腋窩(えきか=わきの下)に綿が固定された状態となり、その部分を1週間水に濡らすことができません。痛みについては、施術後数日から1週間程度で落ち着いていきます。
手術そのものは日帰りで、片わきあたり30分程度です。入院の必要はありませんので、「大がかりな手術で長期間拘束される」という印象は、実際よりも重く見積もられていることが多いように感じます。
一方で、固定が外れるまでの1週間は、わきを濡らせず腕の動きにも制限がかかりますので、ここは無理をせずに予定を空けておきたい期間です。
日程は「まず固定の1週間」「次に抜糸まで」の二段で考えると組み立てやすくなります。この先の見通しは第3章で詳しくお伝えします。
1-3. ダウンタイムの長さは、術式だけでは決まらない
ここまで術式ごとの目安をお伝えしてきましたが、同じ剪除法を受けた方でも、生活が元に戻るまでの日数には幅があります。臨床の現場で実感するのは、その差を生んでいるのが手術の名前ではなく、汗腺をどこまで取るか・どう固定するか・両わきを同時に手術するかといった条件のほうだということです。
わきの手術には、顔の手術とは違う特徴があります。腫れや傷が人目に触れにくい代わりに、腕が思うように使えないこと自体が生活に響くのです。「見た目が戻る日」ではなく「腕が普通に使える日」を基準に考えていただくと、必要な休みの日数を見誤りにくくなります。
次章では、その差を生む4つの要素を具体的に見ていきます。
第2章 剪除法のダウンタイムを決める4つの要素|同じ手術でも日数が変わる理由
「ワキガ手術のダウンタイムは何日ですか」というご質問に、私が一つの数字でお答えしないのには理由があります。以下の4つの条件によって、術後の経過が実際に変わってくるからです。
2-1. 汗腺をどこまで取るか
わきには、においの原因となるアポクリン腺と、汗そのものを分泌するエクリン腺という2種類の汗腺があります。剪除法は皮膚を裏返した状態で、この汗腺を直視しながら一つひとつ取り除いていく手術です。
当院では、においをできる限り抑えられるよう、経験を積んだ美容外科の医師が手作業で丁寧に汗腺を除去しています。除去した汗腺は再生しないため、症状が強い方に向いた方法とされています。
ここに、ダウンタイムを左右する一つ目の分かれ道があります。汗腺を丁寧に取ろうとすれば手術時間は長くなり、皮膚を薄く仕上げる分だけ組織への負担も増えるのです。その結果、内出血や腫れが出やすく、回復にかかる日数も延びる傾向があります。
逆に処理が浅ければ術後は軽く済むものの、においが残りやすくなるでしょう。
形成再建外科での経験から申し上げると、この手術の要点は「取り切ること」と「皮膚を生かすこと」を両立させる点にあります。どちらかに振り切れば、においが残るか、皮膚のトラブルが起きるかのどちらかに寄ってしまうのです。
ダウンタイムの短さだけを目的に手術内容を薄めるという考え方を、私はお勧めしていません。
2-2. 固定の方法と期間
剪除法では、汗腺を取り除いたあとの皮膚を、下の組織にしっかり密着させる必要があります。そのために行われるのが、ガーゼや綿を創部に当てて縫い付けるタイオーバー固定や、テープによる圧迫固定です。
この固定には、はっきりした目的があります。ひとつは血腫(けっしゅ=皮膚の下に血液がたまること)を防ぐこと。もうひとつは、はがした皮膚が浮いてしまうのを防ぐことです。
皮膚が浮いた状態では血流が保たれず、皮膚壊死(えし)や創部の離開につながるおそれがあります。固定はダウンタイムを長くしている原因ではなく、トラブルを避けるために必要な工程だとご理解ください。
固定中は、わきに厚みのあるものを挟んだような状態になります。腕を下ろしにくく、体にぴったりした服は着づらくなるでしょう。この期間をどう過ごすかについては、第4章で具体的にお伝えします。
2-3. 両わき同時か、片わきずつか

ダウンタイムの体感を最も大きく左右しながら、あまり語られていないのがこの点です。
- 両わきを同時に手術する場合: 休みを1回にまとめられ、通院も一度で済みます。その一方で、両腕とも動きに制限がかかるため、着替え・洗髪・車の運転といった日常の動作が同時にやりづらくなります。
- 片わきずつ手術する場合: 片方の腕は自由に使えますので、生活は回りやすくなるでしょう。ただし固定と通院を2回繰り返すことになり、治療全体の期間は長くなります。
どちらが正解と決まっているわけではありません。ご家族の協力が得られるか、まとまった休みが取れるか、仕事で腕をどれだけ使うかによって、適した選択は変わります。この点はカウンセリングで必ず確認していただきたい項目です。
2-4. 腕をどれだけ使う生活を送っているか
同じ経過をたどっていても、デスクワーク中心の方と、荷物を運ぶ仕事や小さなお子さんの育児をされている方とでは、日常が元に戻ったと感じる時期に差が出ます。医学的な回復の速度が違うわけではなく、必要とされる腕の使い方の水準が違うためです。
ご自身の1日を振り返り、腕を大きく上げる動作や重いものを持つ動作がどのくらいあるかを数えてみてください。そこがダウンタイムの実質的な長さを決めます。
第3章 ワキガ手術(剪除法)の術後経過|ダウンタイム中に体で起きていること
ここからは、ワキガ手術のうち切開手術を受けた場合に、何がいつ起こるのかを時系列で追っていきます。回復の経過には個人差がありますので、ご自身の予定を組む際の目安としてお読みください。
3-1. 当日から3日目:固定の下での痛みと腫れ
手術は局所麻酔で行いますので、施術中に強い痛みを感じることはほとんどありません。当院では、術後に抗生剤と鎮痛剤を処方しています。麻酔が切れたあとに痛みが出てきますが、処方された鎮痛剤で対応できる範囲であることが多いとされています。
この時期は、わきが固定されているため腕を下ろした姿勢が取りにくく、寝返りが打ちづらいと感じる方もいらっしゃいます。腫れや軽い内出血もこの数日がピークです。予定を詰め込まず、体を休めることを優先していただきたい期間になります。
飲酒や激しい運動は血流を増やし、内出血や腫れを強めることがありますので、この時期は控えましょう。
3-2. 4日目から1週間:固定の除去と抜糸まで
痛みは数日から1週間程度で落ち着いていきます。固定を外す時期、抜糸を行う時期は施設や手術内容によって異なりますが、一般的には術後1週間前後を目安に段階的に進めていくことが多いとされています。
固定が外れると、わきを濡らせるようになり、腕も動かしやすくなります。ただし創部が完全に治ったわけではありません。この段階では、腕を大きく回す動作や、脇に強い力がかかる動作はまだ控えていただきます。
3-3. 2週間から1か月:つっぱり感・硬さ・しびれ
抜糸後しばらくは、わきにつっぱるような感覚や、皮膚の下が硬く触れる状態が続くことがあります。これは組織が治っていく過程で起こるもので、時間とともに徐々にやわらいでいくのが一般的です。
腕を上げたときにつっぱりを感じる場合も、無理のない範囲で少しずつ動かしていくことで改善していく傾向があります。
わきや二の腕の内側にしびれや感覚の鈍さが残ることもあります。多くは一時的なものとされていますが、期間には個人差があり、数か月を要する場合もあります。
「いつまでに必ず消える」と申し上げられる性質のものではありませんので、気になる状態が続く場合は担当医にご相談ください。
なお、正常な経過と、受診が必要な状態は分けて考える必要があります。痛みは数日から1週間程度で和らぎ、腫れや内出血は2週間程度をかけて落ち着いていくのが通常の流れです。
これに対し、痛みが和らぐ気配のないまま強まっていく場合、腫れが2週間を過ぎても改善傾向を見せない場合、発熱や強い赤み・膿を伴う場合は、感染や血腫の可能性があります。回復の経過から外れていますので、次の診察を待たずにご連絡ください。
3-4. 固定と通院のスケジュールの目安

術後の予定を立てやすくするために、一般的な流れを整理しておきます。実際の日程は手術の内容や施設の方針によって異なりますので、必ずご自身の担当医の指示を優先してください。
|
時期 |
主に行われること |
生活の状態 |
|
手術当日 |
局所麻酔での手術(片わき約30分)、固定、内服薬の処方 |
帰宅可。安静を優先する |
|
術後数日 |
経過の確認・処置 |
痛みのピークが過ぎていく |
|
術後1週間前後 |
固定の除去、抜糸(段階的に行われることが多い) |
わきを濡らせるようになる |
|
術後2週間〜1か月 |
経過観察 |
つっぱり感や硬さが残りつつ、生活は戻っていく |
|
その後 |
傷跡の状態と、においの変化の確認 |
通常の生活 |
「固定が外れる日」「抜糸の日」「腕を普通に使える日」の3つを把握しておけば、仕事や予定の調整はぐっと立てやすくなります。カウンセリングの段階で、この3点を確認しておくことをお勧めします。
第4章 ワキガ手術のあと仕事・入浴・運動はいつから戻せるか|ダウンタイム中の生活
ワキガ手術のダウンタイム中に多くの方が知りたいのは、「いつから元の生活に戻れるか」という一点だと思います。ここでは生活の場面ごとに整理していきましょう。以下はいずれも一般的な目安であり、回復の経過によって前後します。
4-1. デスクワーク・立ち仕事・力仕事の復帰
腕をどれだけ使うかによって、復帰できる時期は変わります。
- デスクワーク・在宅勤務: 固定中でも比較的早い段階から可能とされています。ただし体にフィットする服は着づらいため、服装の準備は必要です。
- 接客・立ち仕事: 腕を大きく動かす場面が少なければ、固定期間中でも対応できる場合があります。荷物を持つ動作が多い職種では、無理のない範囲に調整しましょう。
- 力仕事・腕を大きく使う仕事: 抜糸を終えてからの再開が望ましく、重量物を扱う作業はさらに時間をおくほうが安心です。
判断に迷う場合は、「腕を肩より上に上げる動作」「10kg近いものを持ち上げる動作」がどれだけ含まれるかを目安にしてみてください。
4-2. シャワー・入浴・洗髪
当院の切開手術では、腋窩に綿が固定された状態となり、その部分を1週間水に濡らすことができません。この期間はわきを避けてシャワーを浴びる形になります。
洗髪については、固定を濡らさないよう腕を上げすぎない姿勢で行う必要があり、ご家族に手伝っていただくか、美容室を利用する方もいらっしゃいます。
湯船につかる、サウナに入る、プールや温泉を利用するといった行為は、創部が落ち着いてからになります。血流が増えることで腫れや内出血が強まる可能性があるほか、感染の観点からも、再開の時期は担当医に確認してください。
ミラドライの場合は事情が異なり、照射の当日からシャワーが可能です。入浴は控えていただきますが、激しい運動や脇への摩擦を伴う行為を1週間ほど避けていただければ、日常生活の制限はほとんどありません。
4-3. 運動・ジム・スポーツの再開
運動は段階的に戻していきます。散歩程度の軽い運動から始め、ジムでのトレーニングや腕を使うスポーツは創部の状態を確認しながら再開するのが安全です。とくに、腕を大きく振る動作や、わきに繰り返し摩擦が加わる競技は、再開を急がないほうがよいでしょう。
「痛みがないから大丈夫」と判断してしまいがちですが、痛みが引いていることと、創部が力に耐えられることは別です。再開の時期は自己判断せず、診察のたびに確認していただくことをお勧めします。
4-4. 手術前に整えておきたい生活の準備

ダウンタイムを穏やかに過ごせるかどうかは、手術前の準備でかなり変わります。特別な道具は必要ありません。
- 衣類: 頭からかぶらずに着られる、前開きでゆったりした服を数枚用意しておきましょう。
- 睡眠: 腕を下ろしにくい時期は、仰向けで休みやすいよう枕やクッションを調整しておくと楽になります。
- 洗髪と入浴: 固定を濡らさずに済む段取りを、あらかじめ決めておきます。
- 移動: 車の運転はハンドル操作で腕を使いますので、固定期間中の移動手段を考えておくと安心です。
生活の準備というと細かなテクニックを想像されるかもしれませんが、大切なのは「腕が思うように使えない1週間をどう乗り切るか」を先に決めておくこと、その一点に尽きます。
第5章 ダウンタイムが終わったあとに続く経過|傷跡・においの残り・汗の変化
固定が外れ、抜糸を終えても、ワキガ手術の経過はそこで終わりではありません。ここからは、ダウンタイムの先にある変化についてお伝えします。手術を決める前に知っておいていただきたい内容です。
5-1. 傷跡はどのように変化していくか
剪除法では、皮膚のしわに沿って最小限の幅で切開し、美容外科の技術を用いて丁寧に縫合します。わきという部位はもともとしわが多く、腕を下ろせば隠れる位置でもあるため、傷跡が目立ちにくい条件はそろっていると言えるでしょう。
とはいえ、傷跡がまったく残らないという表現は正確ではありません。手術で切開を加える以上、線状の跡は残ります。術後しばらくは赤みを帯び、数か月をかけて徐々に色が落ち着いていくのが一般的な経過です。
傷跡を目立ちづらくする効果を期待して縫合の工夫は行いますが、体質による差は残ります。
当院では、剪除法のリスク・副作用として、感染、皮膚壊死、出血、創部離開、ケロイド形成、色素沈着、テープかぶれ、傷が目立つことを挙げています。とくにケロイド体質の方は、傷跡が盛り上がる可能性をあらかじめご相談ください。
体質によって経過が変わる部分ですので、カウンセリングでお伝えいただきたい情報です。
5-2. においが完全には消えないことがある理由
「手術を受ければにおいはなくなりますか」というご質問には、慎重にお答えする必要があります。
剪除法は、においの原因となるアポクリン腺を直接取り除く方法で、取り除いた汗腺は再生しません。そのため、症状が強い方に向いた方法とされています。ただし、皮膚の下に分布する汗腺をすべて残らず取り切ることを保証できる手術ではありません。
取り残しが生じれば、においが残る可能性はあります。
また、ワキガのにおいには、汗腺だけでなく皮膚の常在菌や毛の存在も関わっています。手術で汗腺を減らすことと、においがゼロになることは、同じではないとご理解ください。
臨床の現場でも、術前と比べて明らかに軽くなった一方で、まったく感じなくなったわけではない、という受け止め方をされる方はいらっしゃいます。
「完全になくなる」と説明する情報を見かけたときは、その根拠がどこにあるのかを確かめていただきたいと思います。効果を大きく見せる説明は、術後の落差を大きくするだけです。
5-3. 「代償性発汗」という言葉をどう受け取るか
ワキガ手術を調べていると、代償性発汗(だいしょうせいはっかん)という言葉を目にすることがあります。わきの汗を止めると、別の部位から汗が増えるのではないか、というご不安につながりやすい用語です。
この言葉の出どころを確認しておきましょう。日本皮膚科学会の「原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版」で代償性発汗が主に論じられているのは、胸部交感神経遮断術という、胸腔内で神経を遮断する手術の合併症としてです。
同ガイドラインでは、この手術の術後に起きる代償性発汗の頻度は報告によって幅があるとされ、十分なインフォームドコンセントのもとに行うべき治療と位置づけられています。
わきの皮膚とその直下を扱う剪除法やミラドライは、これとは作用する場所も範囲もまったく異なる治療です。したがって、交感神経遮断術で語られる代償性発汗を、そのまま当てはめて心配する必要はないと考えられます。
ただし、絶対に起きないと言い切れるものでもありません。術後に「汗のかき方が変わった気がする」と話される方はいらっしゃいますし、この点について大規模な検証が行われているわけでもないからです。
不安に感じられる場合は、遠慮なくカウンセリングでお尋ねください。
第6章 ダウンタイムを短くしたい方へ|手術以外の選択肢という考え方
ここまでお読みになって、「ダウンタイムを考えると手術は難しい」と感じられた方もいらっしゃるかもしれません。その場合に検討していただきたいのが、切らない治療という選択肢です。
6-1. ミラドライという選択肢と、そのエビデンス
ミラドライは、マイクロ波を皮膚に照射する治療です。マイクロ波によって細胞内の水分子が振動して熱が生じ、真皮と脂肪組織の電磁特性の違いによって皮下組織でマイクロ波が反射することで、汗腺が多く分布する層が加熱されます。
同時に皮膚の表面を冷却するため、表面には損傷を与えずに汗腺を加熱できる仕組みです。
ダウンタイムの面では、切開手術とはっきり違います。当院では照射の当日からシャワーが可能で、多くの方が翌日から日常生活に復帰されています。腫れのピークは2〜3日目に現れることがあり、皮下のむくみやしこりは数日から2週間程度で消失していくのが一般的です。激しい運動や脇への摩擦を伴う行為は、1週間ほどお控えください。
一方で、エビデンスについては正確にお伝えしておきたいと思います。前述の日本皮膚科学会のガイドラインでは、機器による多汗症治療の推奨度は腋窩多汗症に対してC1とされ、「有効性と安全性に関する結論を引き出すには不十分」と記載されています。
国内から報告されているエビデンスレベルIIの研究も、26人を対象とした小規模なものです。合併症としては、皮下組織の壊死や瘢痕形成が報告されており、これらは数週で軽快したとされる一方、神経損傷が長期間持続した報告も存在します。
ミラドライは、厚生労働省に治療効果を承認された機器です。ただし、承認を得ていることとエビデンスが十分であることは別の話です。効果にも安全性にも幅があることを理解したうえで選んでいただくのが、私の考える誠実な向き合い方だと思っています。
6-2. ボツリヌス療法という選択肢
汗の量を抑えることが目的であれば、ボツリヌス療法も選択肢になります。交感神経から出る神経伝達物質の働きを抑えることで、発汗を抑制する治療です。
当院では注射後2〜3日で効果が現れ始め、4〜9ヶ月(平均6か月)持続します。ダウンタイムはほとんどなく、2日ほどサウナ等をお控えいただく程度です。
先ほどのガイドラインでは、A型ボツリヌス毒素製剤の局所注射について、腋窩多汗症に対する推奨度はBとされ、重度の腋窩多汗症に対しては行うことが勧められると記載されています。エビデンスの面では、機器による治療より確かな位置づけにあると言えるでしょう。
ただし注意点があります。この治療が抑えるのは主に汗であり、においの原因となるアポクリン腺そのものを取り除く治療ではありません。汗が減ることでにおいが軽くなる面はありますが、それは間接的な効果です。
においを主訴とされる方が手術と同等の変化を期待されると、ずれが生じます。
6-3. 「手術をしない」という判断も、選択肢のひとつです
美容医療の記事は、何らかの治療を勧める方向に流れがちです。しかし私は、症状の程度によっては治療を急がない選択も十分にあり得ると考えています。
ワキガのにおいや汗の悩みは、ご本人が感じている強さと、医学的に手術が必要とされる程度とが一致しないことがあります。市販の制汗剤で日常に支障がない方まで、ワキガ手術のダウンタイムを負う必要はありません。
市販の制汗剤や外用薬で日常に支障が出ない範囲であれば、まずそこから試していただくのが自然な順序でしょう。当院で扱っているパースピレックスのような外用の選択肢もあります。
「やりすぎない」という当院の方針は、ここにも当てはまります。ダウンタイムを負ってまで手術を受けるべきかどうかは、症状の強さと生活への支障を照らし合わせて判断するものであり、あらかじめ答えが決まっているものではありません。
カウンセリングでは、手術をしないという結論も含めてご一緒に考えます。
6-4. 治療ごとの費用
ダウンタイムと並んで日程の判断材料になるのが費用です。当院のわきが・わき汗治療の料金は次のとおりです。
切開手術・外用
|
項目 |
価格 |
|
剪除法(手術) |
片側 ¥165,000 |
|
パースピレックス(ワキ用) |
¥5,830 |
ミラドライ
|
プラン名 |
施術者 |
麻酔法 |
1回目 |
2回目以降(1年以内) |
|
ドクタープラン |
女性医師 |
ウォーターダイセクション法 |
¥349,800 |
¥235,125 |
|
Nプラン |
トレーニングを受けた看護師 |
ウォーターダイセクション法 |
¥198,000 |
¥161,700 |
多汗症注射(3種類の製剤をご用意しております)
|
項目 |
ボトックスビスタ(アラガン社) |
ゼオミン(メルツ・ファーマ) |
ナボタ(デウン製薬) |
|
生産国 |
アメリカ |
ドイツ |
韓国 |
|
米国FDA認可 |
〇 |
〇 |
〇 |
|
日本厚生労働省の承認 |
〇 |
ー |
ー |
|
軽度多汗症60U |
¥99,000 |
¥99,000 |
¥71,500 |
|
中等度多汗症80U |
¥110,000 |
¥110,000 |
¥82,500 |
|
重度多汗症100U |
¥121,000 |
¥121,000 |
¥99,000 |
|
ミラドライ アフターフォロー 軽度60U |
¥79,200 |
¥79,200 |
¥35,750 |
|
ミラドライ アフターフォロー 中等度80U |
¥88,000 |
¥88,000 |
¥41,250 |
|
ミラドライ アフターフォロー 重度100U |
¥96,800 |
¥96,800 |
¥49,500 |
価格はすべて税込です。
- 指名料: 土屋医師の施術をご希望の際は、施術費用に加えて10%の指名料を頂戴しております。
- 麻酔: 料金に麻酔料金は含まれています。施術後に処方する内服薬・外用薬は別途ご料金がかかります。
- ミラドライ アフターフォロー: ミラドライ後5年間にわたり、年に1回、合計5回まで、ボツリヌス毒素注射を上記の価格でご提供いたします。
- プラン変更: 1回目医師プランから2回目Nプランをご希望の場合は「Nプラン2回目」料金適応。1回目Nプランから2回目医師プランをご希望の場合は特別料金¥313,500(税込)となります。
なお、剪除法は保険が適用される場合のある術式ですが、当院は自由診療専門のため、上記はすべて自由診療の料金です。詳細は[わきが・わき汗の料金一覧]をご確認ください。治療内容については[わきが・わき汗の治療ページ]、ミラドライの仕組みについては[ミラドライの治療内容]で詳しくご説明しています。
第7章 ワキガ手術のダウンタイムについてよくある質問
カウンセリングで実際にいただくことの多いご質問にお答えします。
「手術の翌日から仕事に行けますか?」
デスクワークや在宅勤務であれば、固定期間中でも可能な場合があります。ただし固定によって腕を下ろしにくくなり、体にフィットする服も着づらくなりますので、通勤や服装の段取りは事前に考えておきましょう。
腕を大きく使う仕事や力仕事の場合は、抜糸を終えてからの復帰が望ましいと考えられます。切らない治療であるミラドライやボツリヌス療法であれば、翌日からの復帰は一般的です。
「両わき同時に手術を受けられますか?」
同時に受けること自体は可能ですが、両腕の動きが同時に制限される点をご理解いただく必要があります。着替え・洗髪・車の運転がやりづらくなりますので、ご家族の協力を得られるか、まとまった休みを確保できるかが判断の分かれ目になるでしょう。
生活を優先して片わきずつ進める方もいらっしゃいます。どちらを選ぶかは、症状ではなく生活条件で決めていただいて構いません。
「固定をしている間、シャワーや洗髪はどうすればよいですか?」
当院の切開手術では、腋窩に綿が固定された状態となり、その部分を1週間水に濡らすことができません。この期間はわきを避けてシャワーを浴びていただきます。
洗髪は腕を上げすぎない姿勢で行う必要があり、ご家族に手伝っていただく、あるいは美容室を利用するという方法もあるでしょう。手術前に段取りを決めておくと、この1週間はぐっと楽になります。
「腫れや痛みが強くなってきたとき、受診の目安はありますか?」
痛みは数日から1週間程度で落ち着き、腫れや内出血は2週間ほどかけて引いていくのが通常の経過です。この流れから外れる場合、つまり痛みが和らがないまま強まっていく場合や、腫れが2週間を過ぎても改善傾向を見せない場合は、次の診察を待たずにご連絡ください。
発熱、強い赤み、膿を伴う場合も同様です。感染や血腫は早く対応するほど経過がよくなりますので、迷ったら連絡していただくほうが安全です。
「手術を受けるなら夏と冬のどちらがよいですか?」
意外に見落とされやすい論点です。夏はにおいや汗が気になりやすい季節ですが、固定期間中は汗をかいても洗い流せないため、過ごしにくさがあります。
一方、涼しい時期は衣類が厚手になるぶん固定が目立ちにくく、汗による不快感も抑えられるでしょう。においを本格的に気にする季節の前に治療を終えておくという考え方から、秋から冬にかけて手術を受け、翌年の夏に備える方もいらっしゃいます。
「他院で受けた手術の傷跡が気になります」
わきの傷跡についてのご相談も承っています。当院では、体の傷跡修正を[美容医療後遺症外来・他院修正]で扱っており、しこりや傷跡、色素沈着といったお悩みに対応しています。ただし、傷跡は時間の経過とともに変化していくものです。手術から間もない時期であれば、まず経過を見守るという判断もあり得ますので、現在の状態を診察したうえでご説明します。
第8章 ワキガ手術の日程は、休める日から逆算して決める
ここまで、ワキガ手術のダウンタイムを術式・条件・時系列の三つの角度から見てきました。最後に、この情報を実際の日程に落とし込む方法をお伝えします。
8-1. 手術日を決める前に押さえる3つの日付

ワキガ手術の日程は、「いつ手術できるか」ではなく「いつなら休めるか」から逆算すると失敗しにくくなります。押さえるべき日付は3つです。
- 固定が外れる日: ここまではわきを濡らせず、腕の動きに制限がかかります。生活の負担が最も大きい期間です。
- 抜糸の日: ここを越えると、腕を使う動作を段階的に戻していけます。力仕事の復帰はこの日より後に置きます。
- 腕を普通に使える日: つっぱり感や硬さが落ち着き、入浴・運動や重い荷物の扱いを再開できる時期です。回復を実感できる頃合いでもあります。
この3つを手帳に書き込み、そこから逆算して手術日を決める。それだけで、「思ったより休みが足りなかった」という事態はかなり防げます。カウンセリングの場では、この3つの日付が具体的にいつになるのかを、遠慮なくお尋ねください。
8-2. カウンセリングで確認しておきたいこと
クリニックを比べるとき、料金や術式の名前に目が向きがちです。しかしダウンタイムの実際を左右するのは、次のような運用面の情報です。
- 固定の方法と期間: どのような固定を、何日間行うのか。
- 抜糸と通院の回数: 手術後、何回の通院が必要になるのか。
- 両わき同時の可否: 同時に行えるのか、片わきずつを勧められるのか、その理由は何か。
- トラブル時の連絡体制: 診察日以外に痛みや腫れが出たとき、どこに連絡すればよいのか。
- 執刀する医師: 誰が手術を担当するのか。
これらに具体的に答えてもらえるかどうかは、そのクリニックが術後をどこまで見ているかの目安になります。手術は受けた時点ではなく、経過が落ち着いた時点で完了するものだからです。
8-3. 京都・すなおクリニックでのわきが・わき汗のご相談について
当院の院長である土屋は、2003年に東京大学医学部医学科を卒業しました。その後、東京大学医学部附属病院や国立がん研究センターで形成再建外科の研鑽を積み、現在は医師・医学博士・美容外科学会専門医として診療にあたっています。
組織を切り、縫い、治していく過程を扱ってきた経歴は、ダウンタイムをどう短くし、傷跡をどう目立たせないかという判断に直接つながっています。
わきが・わき汗の診療では、院長の土屋が中心となりながら、複数の女性医師が対応しています。当院は医師・看護師・スタッフが全員女性ですので、人に話しにくいお悩みも相談しやすい環境だと思います。
ご案内する治療も、手術に限りません。切開手術、ミラドライ、ボツリヌス療法、外用薬という選択肢の中から、症状の強さ・確保できるダウンタイム・ご希望を照らし合わせて、ご一緒に考えます。
エビデンスが十分でない部分については、十分でないとお伝えします。無理な治療の押しつけはいたしません。
ワキガ手術のダウンタイムは、正しく知ってしまえば、恐れるものではなく段取りするものに変わります。まずはカウンセリングで、ご自身の症状にどの選択肢が合うのかを確かめることから始めてみませんか。本記事が、あなたの日程を組み立てる助けになれば幸いです。
執筆・監修:土屋すなお(京都・すなおクリニック院長/医師・医学博士/美容外科学会専門医)
2003年に東京大学医学部医学科を卒業後、東京大学医学部附属病院や国立がん研究センター東病院などで形成再建外科の研鑽を積み、2016年に京都・すなおクリニックを開院しました。
エビデンスに基づく「やりすぎない」美容医療を方針とし、外科と非外科の両面から患者さんに合った治療をご提案しています。
参考文献
原発性局所多汗症診療ガイドライン策定委員会. 原発性局所多汗症診療ガイドライン2023年改訂版(2023年12月一部改訂). 日本皮膚科学会雑誌, 133(13), 3025-3056, 2023.
この医師が監修しました
土屋すなお Sunao Tsuchiya
すなおクリニック院長・日本形成外科学会認定専門医
フェイスリフトと注入・顔の手術のスペシャリスト。美容医療における「やりすぎない」自然な美しさと調和を重視し、 患者一人ひとりの生活スタイルに合わせた無理のない治療法を提案しています。
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医師としての視点で見る美容の裏側や、院長個人の考え、日常の出来事についてはnoteで発信しています。











