美容コラム
小陰唇縮小でアップセルが横行していることについての私の考え
2026/08/15
100万円の見積書を持って来られる方が、思いのほか多い
「他院でカウンセリングを受けたのですが、これは妥当なのでしょうか」
そう言って、他院の見積書を手に当院へ相談に来られる方がいます。
小陰唇縮小術に関して言えば、提示額が100万円前後になっているケースも決して珍しくありません。
見積書の内訳を拝見すると、
・小陰唇縮小術そのものの金額以外に副皮切除
・陰核包皮の縮小
・大陰唇へのヒアルロン酸注入や脂肪注入
・腟のレーザー照射
・色素沈着に対する外用やレーザー
・再生医療的な注射
・術後のケア用品
・麻酔のグレードアップ
・アフターケア保証……
といった項目が積み上げられています。
ホームページには数万円~10万円台の表記になっているにも関わらずです。
私はこの構造そのものを、医療者として看過できないと考えています。

なぜ「小陰唇」で、それが起きやすいのか
美容医療における追加提案自体は、必ずしも悪ではありません。
医学的に必要な処置を説明せずに手術に臨むほうが、むしろ不誠実です。
問題は、小陰唇という領域が、患者さんにとって極めて検証しづらい相談事だという点にあります。
第一に、羞恥心が判断を鈍らせます。
デリケートゾーンの悩みは、家族にも友人にも相談しにくいものです。
多くの方が、誰にも言えないまま何年も抱えてこられます。
カウンセリングルームで初めて他人にその悩みを打ち明けた——その状態は、心理的にきわめて無防備です。
「やっと打ち明けることができ、しかも理解してくれる人に出会えた」という感覚が、そのまま提案への信頼にすり替わってしまうことがあるのです。
第二に、比較の材料がありません。
二重整形であれば、友人の症例も、SNSの投稿も、街を歩く人の顔も、いくらでも参照できます。
しかし小陰唇の形は、他人と見比べる機会が人生でほとんどありません。
「あなたのこの状態は平均より大きい」「左右差が強い」と言われても、平均を知らないのですから、否定のしようがない。
実際には、小陰唇の大きさ・形・左右差・色調には非常に大きな個人差があり、多少の左右差はむしろ一般的です。
第三に、密室性です。
その場に第三者はいません。持ち帰って冷静に検討する時間も、しばしば与えられません。
「今日ご契約の方限定で」という一言が、検討する権利を静かに奪っていきます。
この三つが重なると、追加提案が通りやすい環境が完成します。
「恋人にどう思われるか」という切り口について
ご相談の中で、私が最も気にかかるのは、説得の切り口です。
「パートナーの方に、これまで何か言われたことはありませんか」
「次にお付き合いする方に見られたとき、後悔しませんか」
「せっかくやるなら、中途半端は一番もったいないですよ」
こうした言葉を投げかけられた、と話される方がいます。
これは、悩みの動機を本人の外側に置き換える話法です。
本来「自分がどう感じるか」であったはずの問題が、いつの間にか「他人からどう評価されるか」の問題にすり替わる。
他人の評価には上限がありませんから、いくらでも不安を積み増すことができます。
私は、他者の視線を動機にした美容医療を全否定するつもりはありません。
人の悩みは、そもそも社会的な文脈の中で生まれるものです。
ただ、医療者の側から他者評価の不安を新たに植え付けることは、治療ではないと考えています。
目の前の方がもともと抱えていた困りごとを解決するのが手術であって、困りごとを増やしてから解決策を売るのは、順序が逆です。
医学的に、同時に行う意味がある処置はあります
追加提案がすべて不当なわけではありません。
たとえば、小陰唇と副皮、陰核包皮は解剖学的に連続した構造です。
小陰唇だけを大きく切除すると、相対的に副皮や包皮が目立ち、仕上がりのバランスが崩れることがあります。
この場合、同時に処置する医学的な合理性は確かにあります。
擦れる・下着に挟まる・清潔を保ちにくいといった機能的な訴えがあるときも同様です。
区別すべきは、その処置が「解剖学的所見から必要」なのか、それとも「メニューとして存在するから提案されている」のかです。

当院の考え方
① 説明する人と手術する人を分けていないため、アップセルは生じません
当院では、カウンセリングから執刀まで医師が担当します。
契約額に連動した報酬を受け取るカウンセラーは説明の場にいません。
説明者に販売の動機がある限り、個人の良心だけでアップセルを防ぐのは難しいと思います。
② 過剰切除は、取り返しがつきません
小陰唇縮小術で最も避けたい合併症は、切除しすぎです。
切りすぎた組織は戻せません。
過剰切除により乾燥、擦れによる痛み、つっぱり感、性交時の不快感といった、術前にはなかった症状を生むことがあります。
③ その日に決めていただかなくて構いません。
検討期間を置いて気持ちが変わったなら、それはもともと必要のなかった手術です。
当院にとっても、迷いを抱えたまま受けた手術は良い結果になりません。
④ 当初お伝えした金額から増やしません。
術中に予定外の追加費用が発生する運用をしていません。
ご不安があれば、最初の説明の時点で総額を書面でご確認ください。

受診を検討されている方へ
他院の見積書を持って相談にお越しいただくことに、遠慮は要りません。
むしろ、その一手間が過剰な契約を防ぎます。
当院で手術を受けられるかどうかは別の問題で、必要がなければ「今は何もしなくてよい」とお伝えすることもあります。
大切なのは、誰か一人の言葉で決めないことです。
羞恥心のある相談だからこそ、密室で完結させない。
この領域では、それが最大の防御になります。
このコラムを書いた医師
医師/日本形成外科学会認定専門医
堀 医師 Dr.Hori
スキンケアと婦人科手術のスペシャリスト
寄り添う心で、美しさと自信を引き出します
患者様の悩みや希望を丁寧にお聞きし、患者様により自信を持っていただくよう一緒に歩んでいきたいと思います。
不安なことも納得いくまでご相談させていただきます。
どうぞよろしくお願いいたします。
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